【締切間近】培養肉の国際会議「ISCCM12 2026」の演題募集
国際培養肉科学会議2026(ISCCM12 2026)の演題募集が始まっています。締切が近いので、その概要と合わせて紹介します。
国際培養肉科学会議(ISCCM)について
国際培養肉科学会議(ISCCM:International Scientific Conference on Cultured Meat)は、培養肉研究に特化した国際会議です。今回で12回目となり、例年10〜11月ごろにオランダのマーストリヒトで開催されます。
培養肉分野では、オランダ・マーストリヒト大学のマーク・ポスト教授が昨今の培養肉ブームの火付け役となっています。この場所で開催される理由も、ISCCMの主催者のひとりであるマーク・ポスト教授の意向だと個人的には思っています。ですので培養肉研究者にとって、この学会に参加することは聖地巡礼の感覚に近いのではないでしょうか。何はともあれ、開催場所と時期が毎年大きく変わらないのは参加予定が立てやすく助かりますね。
培養肉の技術寄りの国際会議としては、世界で最も有名なイベントのひとつです。培養肉に関するイベントは他にもありますが、学術寄りに技術を議論する場としてはかなり貴重だと思います。
培養肉研究員を名乗るからには、いつか参加してみたい学会のひとつです。
ISCCM12 2026への演題登録
そして今年も、オランダのマーストリヒトで「ISCCM12 2026」が開催されます。開催日程は2026年11月15〜17日の3日間です。
参加登録はまだですが、先に演題登録が開始されています。発表形式は、口頭発表(15分)、ポスター発表、そして3分間のステージピッチが付くポスター発表から選べます。
発表内容としては、培養肉関連の「組織工学」「培養液開発」「細胞株開発」「社会的・環境的・経済的側面」「培養肉の栄養特性や嗜好性」「製造プロセス開発」や、その他の関連基盤技術(遺伝子編集やAIなど)が対象です。
そして肝心の応募締切は、現在延長されて日本時間の2026年6月22日(月)06:59までになっています。紹介が遅れて申し訳ございません(この記事の公開は6月21日9時です)。忘れていた、という方はまだ時間がありますので頑張ってください。
ISCCMに参加する意味
日本からオランダまで行く意味があるのか、とまず考えると思います。
ただ、培養肉業界への参画を考えている研究者や企業担当者であれば、技術トレンドを把握する場として参加する価値はあると思います。私自身も未参加なので説得力に欠けますが、昨年度の参加者やプログラムを見るだけでも、かなり濃い場であることは分かります。
昨年度は、27人の日本人が参加したとのことです。ISCCM2025のプログラムを見ると、味の素、インテグリカルチャー、住友理工、東京大学、東京農業大学、弘前大学などからの発表・出展が確認できます。
特に味の素は、2026年4月に植物由来成分「ヒノキチオール」を活用した培地コスト削減技術を発表しています。前年のISCCMプログラムで発表済みと記載があるため、企業発表より前の技術動向を追う場としても意味があります。
培養肉業界では、どの技術が実装に近づいているのか、逆にどこがボトルネックとして残っているのかが見えづらいところがあります。細胞株、培地、足場材、スケールアップ、規制、消費者受容が同時に動いているからです。
その意味で、ISCCMは「いま世界で何が技術的に注目されているのか」を直接見られる場だと思います。培養肉業界への参画を考えている方は、時期が合えば参加するのも手だと思います。
ISCCMに参加するための出張設計
ISCCMに参加しようと思っても、それだけだと出張許可が下りない可能性があります。
そこでISCCMが開催される前後に、同じくフードテック関連イベントの視察を組み合わせるのもひとつの手です。候補になりそうなイベントを2つ紹介します。
①Advanced Course Cellular Agriculture
Advanced Course Cellular Agricultureはオランダのデルフト工科大学で開催される、細胞農業の集中講習です。日程は2026年11月11〜13日となっています。
講義とグループワーク形式で、培養肉だけでなく精密発酵も含めた細胞農業全体が学べます。具体的な内容としては、動物細胞の増殖・分化、細胞株、製品開発、バイオリアクター設計、技術経済性評価(TEA)、ライフサイクルアセスメント(LCA)、Novel Food登録、消費者受容などが含まれます。
英語での議論参加型ですので、ある程度の知識を持っておく必要がありますが、業界人にとってはかなり勉強になりそうなプログラムです。
出張申請では、「培養肉の研究開発・スケールアップ・事業化評価に必要な体系的知見を取得するため」という理由にできるかなと思います。
②Inhouse Farming – Feed & Food Show / EuroTier
Inhouse Farming – Feed & Food Showは、EuroTier 2026の一部として開催される、次世代農業・食品システムの展示会です。EuroTier自体は、専門畜産向けの世界的展示会で、日程は2026年11月10〜13日、開催場所はドイツ・ハノーファーになっています。
公式トピックの中には、「Cellular agriculture, bioreactors」があります。紹介文としても「肉・乳・卵などの動物性製品や植物由来製品をin vitroで生産する食品生産方法」として説明されていますので、細胞農業に関する情報も得られる可能性があります。
培養肉や細胞農業だけを扱う展示会ではないですが、既存の畜産・飼料・食品産業の中で、新しい食品生産技術がどのように位置づけられているのかを捉えることができそうです。
出張理由としては、「培養肉を含む細胞農業技術が、既存の畜産・飼料・食品産業とどのように接続されるかを調査する」という形にできるのではないでしょうか。培養肉単独ではなく、周辺産業まで含めて見られる点は出張申請上は使いやすいと思います。
ヨーロッパ出張としての組み方
せっかくヨーロッパに向かうのであれば、ISCCMだけで終わらせるのは少しもったいないです。
日程だけを見ると、11月10〜13日にドイツ・ハノーファーでInhouse Farming – Feed & Food Show / EuroTier、11月11〜13日にオランダ・デルフトでAdvanced Course Cellular Agriculture、11月15〜17日にオランダ・マーストリヒトでISCCM12 2026が開催されます。
すべてを詰め込むのは現実的に難しいかもしれませんが、ISCCMに加えて、どちらか1つを組み合わせるだけでも出張目的はかなり明確になります。
また、EU圏内の企業や大学への訪問予定を入れられるのであれば、さらに出張申請は通しやすくなると思います。培養肉の技術だけでなく、周辺産業、規制、事業化、教育プログラムまで含めて見に行くという設計にできるからです。
まとめ
培養肉は、論文だけを追っていても、企業発表だけを追っていても全体像が見えにくい分野です。
世界全体で進んでいる培養肉業界に参入する場合は、国内だけ見ていては方向性を間違ってしまう可能性があります。そして世界の技術トレンドやボトルネックは、これから日本にも訪れるものかもしれません。
ISCCMは、培養肉の技術トレンドを直接追える貴重な国際会議です。演題登録は締め切られますが参加登録はこれからですので、ぜひご一考頂ければ、そして現地の空気感を共有して頂けますと幸いです。
引用文献
-
ISCCM – International Scientific Conference on Cultured Meat
https://culturedmeatconference.com/ -
Submit an Abstract – ISCCM
https://culturedmeatconference.com/submit-abstract/ -
ISCCM 2025 Program
https://culturedmeatconference.com/2025-program/ -
Cellular Agriculture – Precision fermentation and cultured meat | Biotech Delft
https://biotechdelft.com/courses/cellular-agriculture/ -
Inhouse Farming – Feed & Food Show / EuroTier 2026
https://www.inhouse-farming.com/en/ -
味の素、細胞性食品用培地のコスト削減に貢献する、植物由来の成分を活用した新技術を開発
https://news.ajinomoto.co.jp/2026/04/20260416.html