培養肉生産に使える?植物性の培養足場材に関する論文リスト
培養肉生産時に使う足場材は、それが食べられるなら、安全性も説明しやすい培養肉の一部になります。加えて、細胞が接着し、立体構造が作れ、最終製品のテクスチャーを良くする素材であればなお嬉しいことです。
今回は、その中でも植物を中心として食品素材を使った培養肉の論文をリスト化しました。どういったものが使えるのか、参考になればと思います。
アロエベラ足場材上でのウシ脂肪塊の培養:Cultivation of bovine lipid chunks on Aloe vera scaffolds
ヘブライ大学(The Hebrew University of Jerusalem、イスラエル)の論文です。ウシ間葉系幹細胞(MSC:骨・脂肪など複数の細胞へ分化し得る細胞)を、アロエベラ由来の足場材上で培養しています。アロエベラ足場材が細胞の接着、増殖、細胞外マトリックス形成を支持し、オレイン酸を加えることで脂肪様組織の蓄積が見られたとされています。さらに、単回使用のマクロ流体バイオリアクターでの培養も示されており、スケールアップの足掛かりとしても読める内容です。
湖南大学(Hunan University、中国)を中心とした論文です。豚筋幹細胞(pMuSCs:豚の筋肉を作る幹細胞)を、蓮繊維由来の天然植物繊維足場材で培養しています。蓮繊維足場材が細胞の生存性、配向、筋分化を促し、筋形成関連マーカーや細胞外マトリックス関連成分の発現が高まったとされています。さらに、得られた培養肉は外観、食感、栄養プロファイルで従来肉に近い特徴を示したとされ、脂肪分化にも対応できる点が示されています。
江原大学校(Kangwon National University、韓国)の論文です。ウシ筋衛星細胞を、エリンギ近縁の食用キノコであるPleurotus ferulaeから作った脱細胞細胞外マトリックス足場材で培養しています。このキノコ由来足場材が細胞接着、増殖、筋管形成を支持し、細胞が並行に並んだ筋組織様構造を作ったとされています。さらに、硬さ、噛み応え、ガム性が牛肉に近づき、加熱時にはメイラード反応による褐変と肉様の外観も確認されています。
浙江大学(Zhejiang University、中国)の論文です。豚骨格筋衛星細胞を、ポリドーパミン(PDA:ムール貝の接着機構に着想を得た表面修飾材料)で修飾したアガロース足場材上で培養しています。要旨では、PDA修飾によりアガロース足場材への細胞接着率が100%に達し、細胞の増殖と筋線維への分化が進んだとされています。さらに、高密度の筋線維とアガロースフィルム足場材からなる培養豚肉モデルを作製し、豚肉らしい色と食感を示したとされています。
華東理工大学(East China University of Science and Technology、中国)の論文です。C2C12細胞(マウス由来の筋芽細胞株)を、脱細胞パセリ足場材上で培養しています。足場材はゼラチンAとトランスグルタミナーゼで改質され、縦方向の繊維状構造と横方向のハニカム状構造の違いが比較されています。繊維状の孔構造が細胞を並行に並べ、多核筋管の形成、筋形成関連遺伝子・タンパク質の発現、最終的な総タンパク質量を高めたとされています。
シンガポール国立大学蘇州研究院(National University of Singapore (Suzhou) Research Institute、中国)とシンガポール国立大学(National University of Singapore、シンガポール)の論文です。3T3-L1細胞(マウス由来の前脂肪細胞株)と豚脂肪由来幹細胞を、ライ麦タンパク質のセカリンから作った多孔質足場材で培養しています。セカリン足場材は85〜90%の高い多孔性と連結孔を持ち、細胞の浸潤、接着、増殖、脂肪分化を支持したとされています。さらに、豚脂肪由来幹細胞を12日間培養して作った培養脂肪組織は、外観、食感、風味、脂肪酸プロファイルにおいて従来の豚皮下脂肪に近い特徴を示したとされています。
ミナスジェライス連邦大学(Federal University of Minas Gerais、ブラジル)とミナスジェライス連邦技術教育センター(Federal Center for Technological Education of Minas Gerais、ブラジル)の論文です。不死化脂肪前駆細胞(長期的に増殖できるようになった脂肪細胞の前段階の細胞)を、エレクトロスピニングで作ったセルロースアセテート繊維足場材上で培養しています。細胞が三次元繊維構造に接着、増殖、定着し、成熟脂肪細胞へ分化したとされています。さらに、分化した細胞を含む足場材を積層すると、従来の動物脂肪に似た特徴を示したとされています。