培養肉研究員はビオラモDMEM(1,200円)をこう使う
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培養肉研究員はビオラモDMEM(1,200円)をこう使う

「培地高いな」と思っている培養肉研究者の皆さまへお知らせです。

アズワンのプライベートブランド「ビオラモ(VIOLAMO)」から、500 mLで標準価格1,200円のDMEMが販売されました。以下、「ビオラモDMEM」と記載します。

アズワンのオウンドメディア「Lab BRAINS」の投稿でも紹介されています。

https://x.com/lab_brains/status/2080168164697198861

販売サイトはこちら👇

4-7964-01 ビオラモDMEM培地(高グルコース含) EB158701 【AXEL】 アズワン

販売されている500 mLボトルのDMEMの中で、最も標準単価が安いのではないでしょうか。価格.comにDMEM(500 mLボトル)の項目があれば、きっと1位でしょう。

培養肉研究でDMEMはよく使うので、これは普通に気になりました。

ということでこの記事では、培養肉研究における基礎培地の現状と、ビオラモDMEMを使うケースを紹介していきます。

AIによる記事のまとめ

  • ビオラモDMEM(500 mL・1,200円)が登場。組成は他社同等で、AXELから1本単位で購入できる。
  • 国内の培養肉研究では研究用DMEM+FBSが多く使われており、比較のしやすさという点からも研究段階では問題ない。
  • 最終的には培養肉生産用の培地へ切り替わるため、研究段階では必要な性能を満たす範囲で安いものを使うという選択肢もある。
  • エンドトキシン3.0 EU/mL未満も培養肉研究なら許容範囲。切り替える場合は初代培養で確認し、新規実験系から使用する。

培養肉研究で用いられる基礎培地

培養肉研究で用いられている一般的な基礎培地って何かご存知でしょうか。

研究と一言でまとめても、大学や企業、スタートアップと大企業、国内と海外など、切り口はたくさんあります。

今回の「一般的」で指しているのは、国内かつ培地そのものを開発していない研究現場です。大学も企業も関係ありません。

自ら培地開発を行っている企業は、比較検討のために市販の基礎培地を買うことはあれど、メインの開発では自社の培地を使っていることでしょう。垂直統合型の海外スタートアップに多く見られます。

しかし日本では水平分業型の開発が多いため、培養肉用の培地開発に取り組んでいる企業は少ないです。特に、成長因子などの添加物はまだしも、基礎培地となると片手で数えられる程度になります。

その結果、国内の培養肉研究で多く用いられているのは、試薬グレードの研究用DMEMであるというのが現状です。

培養肉の研究なのに、研究用DMEMで良いのか

私は現状の研究段階であれば良い、と考えています。その理由はアクセス面と研究面の両方にあります。

アクセス面の理由はシンプルに、市販されている培養肉用の培地がほとんどないからです。

強いて挙げるならインテグリカルチャーが出しているI-MEMですが、一般に販売されているものではなく、同社が運営するプラットフォームへ入会する必要があります。そのため、入手するにはひと手間かかってしまいます。

そして研究面で言うと、現状では培養肉用の完全培地がありません。標準品がない状況なので、従来の細胞培養と同様、基礎培地+牛胎児血清(FBS)で実験を行っているケースをよく見かけます。

この場合のデメリットは、もちろん培養肉の生産に直結できないことですが、メリットもあります。それは、他者の技術や先行研究との比較がしやすくなる点です。

例えば、この細胞はどれくらい増えやすい細胞なんだろうと思って調べるときに、誰も使ったことのない培地を使った培養結果だと、細胞のポテンシャルなのか培地の影響なのかが分からなくなってしまいます。

細胞に限らず、他の培養資材などを検討するときも、何かと比較するところから始まると思います。そのときの実験系の培地は、なるべくこれまで使われてきたものの方が好ましいのです。

水平分業型で開発が進む場合、自ら開発した技術が優れていることを示すためには比較検討が必須です。ノイズを減らすため、あえて研究用培地の条件で実施する場合も多いので、現状の研究段階では研究用DMEMを使用していても問題ないと考えていますし、他者の技術を見るときもそこまで気にしません。

研究用DMEMの中でのビオラモDMEMの位置づけ

研究用DMEMで研究を進めても大丈夫というお墨付きを勝手につけたところで、本題のビオラモDMEMの位置づけを見ていきます。

皆様がいま研究で使われている基礎培地は、どこのメーカーのどんな種類でしょう? 基本的には有名メーカーの製品で、特に指定がなければ高グルコースタイプを使っているのではないでしょうか。

今回ビオラモから販売されたのはHigh glucoseタイプのDMEMで、L-グルタミン、ピルビン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、フェノールレッドも含みます。この基礎培地にFBSを添加すれば、多くの細胞の培養に使える、過不足のない基礎培地です。

順番に気になるところを見ていきます。

まず培地組成。詳細は載せませんが、確認したところ、有名他社製の同タイプの培地とほぼ同じ組成、添加濃度になっています。これが入っていないから、あれが足りていないから、というのはこのDMEMを避ける理由にはならないでしょう。

次に価格と販売形状。ビオラモDMEMは500 mLボトル、標準価格1,200円で販売されています。もちろんフィルター滅菌(0.1 μm)済みです。500 mLボトルタイプの単価としては最安値でしょう。まとめ買いなどの買い方によっては他社のDMEMの方が安くなる可能性はありますが、シンプルに安いです。

また、他社が販売している粉末状の培地なら1 Lあたりの価格はさらに下がりますが、調製に手間がかかります。研究室の学生(無給)が調製するならまだしも、企業では人件費が発生するので、逆にコスト高になる場合もあります。学生に作ってもらう場合でも、調製ミスや微生物汚染のリスクを考えると、ボトルで購入するのはリスク管理のひとつになると思います。

そしてアクセス面。大学や企業ではもちろん代理店経由になるかと思いますが、AXELで取り扱っているため、個人事業主でも直接購入できます。既存の理化学代理店との購買環境がなくても入手しやすいのが嬉しい点です。

最後にレパートリー。残念ながら今のところ、前述のHigh glucoseタイプのDMEMしか取り扱っていません。

培養肉研究員の私ならこう使う

私が培養肉研究を立ち上げる際にビオラモDMEMが販売されていたのであれば、実験系はこの基礎培地で作っていたと思います。

理由は、安いことと他のメーカー品と区別しやすいこと。後者が地味に効いてくるのですが、他の実験と研究室を共有していて同じ基礎培地を使っていると、ストック管理が面倒になります。

実際のところ、私も最初はラボにある基礎培地で実験を始めていたのですが、高いし混同してしまうので、安いメーカーに切り替えました。

切り替えるときに注意したことは、初代培養で試すこと、既存の実験系では使わずに新規の実験系から組み込むことの2点です。

普段使っている濃度のFBSなどを添加して初代培養をやってみて、細胞がきちんと接着するか、増殖するか、形態がおかしくないか、など最低限の項目だけ確認します。大きな違いがなければ、思い切って切り替えます。

このように最低限調べたうえで、思い切って切り替えられるところも培養肉研究ならではです。

なぜ培養肉研究なら、この考え方でいいと思うのか

ここからが今回一番書きたかったところです。

培養肉の研究開発には、かなり幅があります。

細胞内の分子機構を詳しく調べる基礎研究もあれば、細胞をどう大量に増やすか、どう安く作るか、とりあえずやってみる、といった開発寄りの研究もあります。

後者の開発寄りの研究では、試薬に求めるものも少し変わってくると思っています。

そもそも培養肉を実際に大量生産する段階で、研究用として500 mLボトルで販売されているDMEMをそのまま使い続ける可能性は極めて低く、あり得ないと言っても過言ではありません。

最終的には、食品製造に適した原料や、大量調製可能な培地、さらに安価な培地へ移行していく必要があります。つまり、いま開発で使うDMEMは、どんなものであっても研究開発の途中での使用にとどまり、最終的には培養肉用の培地に切り替えて検証する、という作業が発生します。

であれば、研究目的を満たせるのであれば、研究段階では安価なDMEMを使うという考え方も十分ありだと思っています。

現状、安価で簡単に購入できる食品グレードのDMEMが普通に流通しているわけではありません。

ならば少なくとも開発寄りの研究では、必要な性能を満たす範囲で、安いものを使う。私はそのくらいでいいと思っています。

浮いた研究費を、細胞の評価や培養装置、分析、スケールアップの検討に使った方が、培養肉の研究としては前に進むと思います。

エンドトキシンは気にしなくていいのか

ビオラモDMEMを見ていて、一つ気になったのがエンドトキシンの基準です。簡単に言うと、エンドトキシンとはグラム陰性菌の死骸の一部(リポ多糖)で、細胞培養にとって良くない異物のひとつです。エンドトキシンが多く存在すると、細胞によっては増殖阻害や炎症反応といった悪影響を及ぼします。

ビオラモDMEMのエンドトキシン規格は、3.0 EU/mL未満となっています。他社製品でよく見かける0.1 EU/mL未満と比較すると、細胞に影響が出てしまう濃度では? と思うかもしれません。

もちろん、エンドトキシンが細胞に影響する可能性はありますが、培養肉の研究においては論点を整理する必要があります。

まず、エンドトキシンへの感受性は細胞によって異なります。免疫系の細胞は反応しやすいため、これらの細胞を使う実験系では特に気をつける必要があります。見たい結果に直接影響を及ぼしてしまうことが明らかだからです。

一方で、培養肉における細胞培養は、まず増えるかどうかが第一です。家畜動物の細胞を用いてメカニズム解明をしている場合はこの限りではありませんが、こと生産という観点では、安定して増えることが重要で、増えることを前提に研究が進んでいます。

そのため、培地に多少のエンドトキシンが含まれていたとしても、使用している細胞に対して顕著な毒性を示さなければ、普通に使えると考えています。むしろ開発という視点では、少しのエンドトキシン濃度の違いで培養結果が大きく変わってしまう細胞を、そのまま実験に使い続ける方が難しいかもしれません。培養肉に使う細胞には、ある程度のばらつきや「雑さ」に耐えられることも重要な性能です。

次に、培養肉生産におけるエンドトキシンの混入についてです。培養肉生産でエンドトキシンの混入を完全に避けるのは難しいと考えています。というのも、エンドトキシンはそこら中に存在するので、意図してエンドトキシンフリーを目指したり、除去剤を使ったりしなければ混入は免れません。

培養肉の生産では安価な食品用途の資材が多く利用されることを考えると、エンドトキシンを厳密に管理するのは現実的に難しいです。事実、培養肉用の培養資材でエンドトキシンについてデータを公開しているものを、私はほとんど見たことがありません。

そこで心配になるのは、培養肉にエンドトキシンが残っていても食品として大丈夫なのか、という問題です。なじみがないので、「トキシン(毒)」という言葉が引っかかり、危険なもののように思えます。

しかしエンドトキシンは細菌の死骸に由来する成分なので、実はそこら中の食品に付着しています。そして経口摂取ではほとんど問題にならないので、食品衛生基準としても定められていないのが現状です。特に厳密な管理が必要になるのは、直接ヒトの体内に投与する医薬品関連の生産時です。

このように、培養肉の研究・生産においては、エンドトキシンの重要度は一般的な細胞培養研究よりも低めに見積もられているのが現状です。使う目的が異なれば、管理水準も変わります。ビオラモDMEMの基準であれば、培養肉の研究においては十分な水準でしょう。

何でも気にしなくていい、という話ではありません。その研究で本当に必要な品質はどこまでなのか。そこを考えて使い分ければいいと思っています。

小さく始まる培養肉研究

培養肉の研究は、必ずしも最初から大きな研究費を持ったプロジェクトとして始まるわけではありません。

この分野では、「これ、できるんじゃないか」と思った研究者が、正式な研究テーマになる前に小さく試してみる、いわば「闇実験」のようなところから始まることもあります。

そんなときに、AXELから1本単位で購入できるDMEMが500 mLで1,200円なら、始めやすいのではないかと思います。

しかも法人だけでなく個人事業主でも利用でき、商品によっては当日出荷にも対応しているので、大学や大企業のように代理店との購買環境が整っていない小さな研究チームやスタートアップ、個人事業でも使いやすいです。これはかなり大きなメリットだと思います。

培養肉研究に必要なのは、必ずしも最初から完璧な研究環境ではありません。まず小さく試して、うまくいけばそこから広げていく。

その入口のコストを下げてくれる試薬には、それだけでも価値があります。

PBSとDPBSも安い

今回はDMEMを中心に紹介しましたが、ビオラモではDMEMと同時にPBSとDPBSも販売されています。どちらも500 mLボトルで標準価格980円です。

Ca²⁺、Mg²⁺を含まないタイプで、細胞の洗浄や継代などに使いやすい仕様になっています。

DMEMと同じく、大量購入時には他社製品の方が安くなる可能性がありますが、1本単位で購入できる価格としてはかなり使いやすいと思います。

DMEMをビオラモへ切り替えるなら、PBSやDPBSもまとめて試してみてもいいかもしれません。ただし、PBSとDPBSでは塩組成が異なるため、現在使っている製品から変更する場合は詳細組成を確認した方がよいでしょう。

まとめ

500 mLで1,200円のビオラモDMEMは、今すぐすべての細胞培養実験の基礎培地をこれに切り替えるべき、と断言できるものではありません。

しかし、培養肉研究で使うDMEMとしては相性が良く、選択肢の第一候補になり得ます。

まず1本購入してFBSなどを加えて初代培養をする。問題なければ、新しく始める実験から使う。さらに問題がなければ、その後の新規実験も順次ビオラモDMEMへ変えていく。私なら、このくらいの使い方から始めます。

培養肉研究では、最終的に研究用DMEMをそのまま使って生産するわけではありません。だからこそ、研究段階では必要な性能を満たす範囲で、もっと安い選択肢を試していいと思っています。

そして何より、500 mLを1本から安く買えて、AXELから購入でき、当日出荷にも対応している。この手軽さは、小さく研究を始める人にとってかなり大きいです。

培養肉研究が安く始められれば、確実に裾野は広がります。ビオラモDMEMは、そんな研究の入口として結構面白い製品だと思っています。

ぜひ培養肉研究に取り組んでいる皆様も、一度ご一考ください。

※価格、製品仕様、在庫、当日出荷可否、購入条件は記事執筆時点の情報です。購入時にはAXELおよび各メーカーの最新情報をご確認ください。

引用文献

  1. アズワン「4-7964-01 ビオラモDMEM培地(高グルコース含) EB158701【AXEL】」。

  2. Lab BRAINS(アズワン)「ビオラモDMEM・PBS・DPBSの紹介投稿」。

  3. アズワン「【ビオラモ(アズワン)】商品の通販【AXEL】」。

  4. アズワン「AXELが選ばれる理由」。

  5. アズワン「革新と創造を体現する最先端物流拠点 Smart DC」。

  6. インテグリカルチャー「独自開発のすべて食品原料から成る基礎培地「I-MEM(アイメム)」を10月26日(水)から世界で受注開始」。

  7. 滋賀医科大学 消化器・一般外科学講座「エンドトキシン」。

  8. 富士フイルム和光純薬「D-MEM (高グルコース) (L-グルタミン, フェノールレッド, ピルビン酸ナトリウム含有)」。

  9. Thermo Fisher Scientific「DMEM, high glucose, pyruvate (11995-065)」。

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